アーチストといっても、このコラムではジャケット・デザイナーというかカバー・イラストレイターというか。クラシック音楽レーベルの老舗、ドイッチェ・グラモフォンが擁するデザイナーのお話。
もともと当通信編集者がジャケ絵にこだわり始めたきっかけは、今から約20年前。まだまだ「若手」の名が似合う頃のクラウディオ・アッバードの新譜にしばしば登場した強烈なイラスト。ロンドン交響楽団とのストラヴィンスキーの一連の録音は、すべてこの人、ピーター・ワンドレイの手になるものだった。シュール系の絵柄とパステルカラーで描かれた「火の鳥」が懐かしい。バレンボイム指揮の二度目の「幻想交響曲」もこの人の絵だった筈。最近はどうも彼の活躍ぶりにお目に掛からないのだが....
いっぽう、同じ頃から現在まで、コンスタントに作品を発表し続けるのがホルガー・マッティース。初めてこの人のジャケ絵に遭遇したのは、編集者の場合、カラヤンの新ヴィーン楽派管弦楽曲集。4枚セットものの箱絵もきれいだったが、単売のそれぞれも美しかった。この頃のカラヤンの新録音では、ショスタコの10番とか、サン・サーンスの「オルガン」とかが彼の作品。
その後、CDでシリーズ化されたバジェット・プライスの「20century Classics」も企画の良さと拮抗するジャケ絵で印象的。シンプル(低予算(^_^;))で洗練された味わい深いもの。シノポリのマーラーとか、シューマン交響曲全集も彼の作品。
ホルガー・マッティースの仕事は非常に職人的というか、飛び抜けて素晴らしいものが決して多いわけではないが、外れも少ない。編集者としては、ただ演奏家の写真ばかりを並べ立てるジャケ絵よりは、彼の一貫したセンスでつくられる作品のほうが好きですなあ。
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