DGから出たR.シュトラウスの『エレクトラ』の新譜がなかなか格好いい。指揮はイタリアの髭面ジュゼッペ・シノポリ、オーケストラはなんとヴィーン・フィル。タイトルロールのアレッサンドラ・マルクというひとはよく知らない。
ジャケ絵はちょっと見には何のことかよく分からないのだが、どうやらこのドラマで重要な役割を果たすアガメムノーン(エレクトラの父)らしい。背景は石牢か。その壁に浮かび上がる亡き父の顔、というわけで、カバーの美術担当Fred Muenzmaierの手になると思われるこの絵がなかなか編集者好みなのであった。
で、ケースを開けてCDを取り出してみると、その後ろに1枚の写真。どこやらの遺跡から出土した「アガメムノーンの黄金のマスク」というものらしい。もう1枚のCDの裏側にはシュトラウスとホフマンスタールの写真が挟み込まれて、という凝ったつくりになっている。ちなみに解説のブックレットの表には例の髭面の写真。この男は、とにかくどのCDにも必ず自分のアップ写真を紛れ込ませており、うっかりするとCDのジャケ絵になったりもするので油断がならない(^_^;)。
ヴィーンとエレクトラ、というと編集者には格別の思い入れがある。数少ないヴィーン国立歌劇場訪問歴のうち、二度までもこのエレクトラを観てしまった。1回目はアッバード指揮クプファ演出の、ヴィーン8年ぶりのエレクトラの初日。この公演はレーザーディスクになって市販されている。そしてその翌年、同居人との初旅行で立ち寄ったヴィーンでまたしてもこのコンビによるエレクトラ。もっとも指揮者は土壇場で降板、急遽代役に立ったイルジ・コウトの棒での演奏。
アッバードの演奏には猛烈なブーがとんだ。LDでも困惑する指揮者の顔がはっきり捉えられている。編集者は1階平土間のすぐ後ろの立ち見での鑑賞だったが、すぐ脇で賛美派と否定派のつかみ合いが起きるなど、なかなかスキャンダラスではあった。K・ベーム亡き後のヴィーンで、この曲は鬼門だったのだろう。
で、この髭面のエレクトラはどうなのだろう。先程ようやく部屋の模様替えを終えて、おもむろに聴き始めたのだが、すぐに同居人の娘が童謡シリーズ第3巻『ちょうちょう』に入れ替えてしまったので、殆どの登場人物の歌を耳にすることができていない。オーケストラはなかなか刺激的で面白そうなのだが。ともあれ、このCDはジャケ絵も箱のデザインも悪くないので、ご紹介した次第。
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