DGから出ている、ギル・シャハムのヴァイオリン・ソロ・アルバム『悪魔のダンス』について。これ、じつは最初「なんだ、ありふれた企画だな」とややシニカルにみていたのだが、店頭で何気なく曲目を眺めていて仰天、「たった1曲のために」という若干の逡巡を経てレジへ走ってしまった。
その曲とは、アルバム二番目に収められている “A Transylvanian Lullaby” John Morris作。これ、知る人ゾ知る映画、メル・ブルックス監督の『ヤング・フランケンシュタイン』の主題曲である。うぅ、シャハムってけっこう冗談の分かるヤツなのか。
『ヤング・フランケンシュタイン』といえば泣く子も黙る、というか、往年の怪奇映画を片端からパロディに仕立てた大爆笑映画だ。題名で分かるとおり、基本的な筋書きは例の怪物の話なのだが、闇夜にそびえ立つ古城のなかで、暴れ回るモンスターをなだめるために、家政婦が弾くヴァイオリンの子守歌、がこの曲である。家政婦はクロリス・リーチマンだったと思う。このひとが「私の名は...フラウ・ブリュッハー!」と自己紹介するたびに、どこかで馬が「ブヒヒヒヒーン」といななくギャグも懐かしい。
オリジナルはオケをバックのヴァイオリン独奏だが、この録音では、伴奏のピアニストがスペシャル・アレンジを施したものになっており、ライナーノートにもとくに謝辞が加えられている...にしても、殆ど原典に沿った編曲だから、もう...ホント、笑ってしまう。いいのか、『悪魔のダンス』を聴いて笑ってても。
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