吉田美奈子『VOICE IN THE WIND』

東越谷編集日記

B00031YATI.09.MZZZZZZZ.jpg Bee’s Webの日記がブログ化された。新譜情報やライブのリアルタイム批評など読み応え十分で、楽しませて戴いているが、11月06日の日記吉田美奈子の初ベスト盤『VOICE IN THE WIND』発売にからんだシアターコクーンでのライブについて書かれている。
 そうか、吉田美奈子の新譜がリリースされたのか。これまで、必ずしもこの人の熱心な聴き手ではなかったが、考えてみればもはや20年以上にわたって、リアルタイムで聴いてきた歌手のひとりだ。『モンスター・イン・タウン』とか、懐かしい。
 それに今般の録音は、全曲が村田陽一編曲によるウィンドアンサンブルの伴奏付きだそうだ。これは聴いてみたい。村田陽一はソリッド・ブラスでの活動を中心に聴いてきたが、アレンジャーとしての才能には瞠目すべきものがあり、ともかくカッコイイ。彼が木管・金管合わせて20名前後の中編成アンサンブルに対して、どんなスコアを書くのだろうか。しかも吉田美奈子のバックバンドとして、である。
 ...で、聴いてみた。いきなり吹奏楽サウンドによるスローなイントロが始まって、若干の違和感を覚える。聴き進むにつれ、ソリッド・ブラスで聴き馴染んだスルドイ切れ味のアレンジとは、まったく違った次元をねらっていることに気付く。ここでは、とにかく吉田美奈子の千変万化する「声」の味わいに、寄り添ったり拮抗したりしながら、多彩に響き合う管楽器の音色を楽しむべきだ。アンサンブルのメンバーはクラシック系の奏者が多いのだろう。メンバーリストには外園祥一郎や古賀慎治の名前もみえる。いわゆる「カテゴリー」に括ることのできない、独自の世界が成立している。
 ライナーノーツには、 VOICE: MINAKO YOSHIDA と記されている。「VOCAL」ではないことにこだわりたい。誰が聴いても「あ、吉田美奈子だ」と分かる素晴らしい歌唱は健在だが、その表現の幅はどこまでも広い。冒頭「Liberty」で聴かれる「自由の響きを聴け!」というシャウトから、「雲の魚」でのスウィンギーな唄い口まで何でもアリだ。全般に遅めの、しかしバラードというよりは聴き手を奮い立たせるような曲が多く選ばれているのは、アンサンブルの特性にあわせたのだろうか。
 ただ、こういうコンセプトのアルバムで聴いてみて、自分はやっぱり吉田美奈子よりも矢野顕子に、より魅かれるなあ、とあらためて思った。吉田美奈子の「声」はほんとうに素晴らしいが、矢野顕子はなによりも「歌手」であり、ことばをたいせつにしている。アッコちゃんの新譜も聴きたい。

コメント

  1. beeswing より:

    トラックバックしたいんですが、そんなちょっとしたことすらまだ覚えていないので(^^;)、コメントで。
    なるほど。や、そういう聴き方が正解だと思うよ。声とブラスの響きを楽しむ、っていうか。パンフでもご当人たちがそんな趣旨のことをしゃべっていたような。「星の海」とか「恋」とか「愛があたためる」とかその辺がぼくはしっくりきます。
    で、矢野顕子の新譜(のこともブログでちらっと触れましたが)も、くるりとのコラボが良い刺激にもなったのかな、ひさびさに傑作、といっていいものです。こちらは本体3000円ジャストという価格設定ですが、ぼくがクオリティは保証します(^^)。

  2. コメント多謝。beeswingさんからの「宿題」と理解して、一所懸命書きました(^^;)。
    で、じつはこのアルバム、ファンクチューンも結構気に入っているのだよな。ここでの管楽の演奏も結構凄いことになっていると思う。もちろん「スパイクの利いた」といった形容詞からは若干距離をおくところはあるんだけど、その分、強奏でも濁らないハーモニーや、アタックからロングトーンまでの表現力が犠牲にならない。こういうの「カッコイイ」と呼びたいなあ。
    「星の海」ももの凄く良いのだけど、アッコちゃんならボーカルのフレーズ、そこでは切らないと思う、ってのがかえって気になった。やっぱ「VOICE」なんだよね。

  3. beeswing より:

    うーん、なるほど。ファンクチューンは正直まだ聞き込めてません。宿題(^^)にします。フレージングねえ。微妙な問題だよね。他の人なら気になることも、吉田美奈子だとどうてもよくなるという傾向はありますが。英語の発音とか(^^)。

  4. 村田陽一さんのメルマガってのがあるんだって。で、こんなのがバックナンバーに見つかりました。ご参考。
    http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000055863

タイトルとURLをコピーしました