遅くまで残業していて、さて帰ろうと思ったときに、ふと帰路の車中で読むべき本が無いことに気付く。コンビニで週刊誌でも買えば良いのだが今ひとつ気が進まない。そんなときは試しに、23時までやっている新宿タワーレコードに寄り道してみる。で、ここの書籍売場で取りあえず購入した『映画作家が自身を語る〜テリー・ギリアム』(フィルムアート社)がなかなか面白い。ギリアムといえば、お馴染みモンティ・パイソンのメンバーで、後に『未来世紀ブラジル』『バロン』『フィッシャー・キング』等々を発表した映画監督。
『ブラジル』のオーディションにマドンナやトム・クルーズが来ていたとか、『バロン』の月世界の王は当初ショーン・コネリーを、また地下世界の王がオリバー・リードではなくマーロン・ブランドを予定していた、といった裏話も興味深い。しかし何より面白かったのは、彼ほどのイマジネーションの持ち主が、当初思い描いた映像をフィルムに焼き付けていく過程で、予算の都合や役者の我が儘、予期せぬトラブルといった障害に出会い、アイデアを変質させていくことを「これこそ映画」といって認めていることだ。これはまさに映画監督の発言だ。トリュフォーも似たようなことを云っている。そしてギリアムは、ヴィスコンティらの作家が自らのイメージに対してぜったい妥協しない姿勢を指摘し、ギリアム自身がそういう道を選ばないことを明言している。面白い。
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